
第2幕と同じ
蝶々さんの家の中。ピンカートンの現れるのを待つうち、障子の前でうたた寝をしてしまったスズキがふと目を覚ますと、
蝶々さんは昨夜と同じ姿で小さな障子の穴から港を見つめている。
スズキが蝶々さんと子どもを奥に寝かせたあと、シャープレスがピンカートンを連れて来る。部屋一杯に撒き散らされた花を見て、ピンカートンは深い後悔の念に沈む。スズキがふと庭先を見ると、そこにひとりのアメリカ婦人が立っている。スズキとシャープレスが、予期したとおりの出来事にピンカートンを責め、別れのアリア『愛の家よ、さようなら』を歌って駆け去る。
そこへ目を覚ました
蝶々さんが奥から走るように出て来るが、そこにいるのは待ちわびたピンカートンの姿ではなく、涙を一杯浮かべたスズキとシャープレス。それに見知らぬひとりのアメリカ婦人。事の一切を悟った
蝶々さんは、人々をそこから立ち去らせ、ひとりきりになって父の形見の短剣を取り出し、そこに刻みこまれている銘を読む。
♪~『操に死ぬるは』
そこへスズキに押し出されるようにして、突然、蝶々さんの子どもが入ってくる。蝶々さんは子どもを抱き上げて涙ながらに別れを告げ、そして自分は屏風の陰にまわり、短刀で自害する。
その時、遠くから彼女の名を呼びながら近付いて来るピンカートンの声が聞こえてくる。苦しい息の下、屏風の陰から這い出した蝶々さんはその声を聞きながら、目隠しをされたまま無心に遊ぶ子どもに近づこうとするが、遂に力尽きてその場に息絶える。
(「歌劇 蝶々夫人」NHK編 日本放送出版協会発行より)